本読む馬鹿が本を読む

好きな本について書いています。あなたがまだ読んでいくて、おもしろそうだ読みたいと思ってもらえるような本が見つかるととても嬉しいです。

正確・丁寧・誠実な文章にハマる-『城の崎にて』志賀直哉

城の崎にて

初めてこれを読んだとき
「これだ。僕が読みたかったのはこういうのなんだよ」
と思いました。

『城の崎にて』のストーリー

電車に跳ね飛ばされ一命をとりとめたのち療養に訪れた城の崎での数日間が描かれています。

滞在中にはいくつかの動物たち見ます。
そして死んでいたかもしれなかった事故のことを考えます。

泊まっている部屋から見える蜂の巣。
忙しなく巣を出入りして働く蜂のとなりで死んでよこたわる1匹の蜂。
忙しなく働く蜂たちは、死んだ蜂を見向きもしません。
そして数日後、降った雨に流されたのが死んだ蜂はもういなくなっていました。

ある日の散歩中に見かけた人だかり。
その人たちが見ていたのは川の中の鼠。
首には串が刺さっていて、一生懸命に川を泳いで逃げようとしていました。
その鼠に石を投げ、笑う人々。
鼠は川から這い上がろうとしても首に刺さった串が引っかかりうまくいきませんでした。

また別の日の散歩。
イモリがいるのを見つけました。
何とはなしに投げてみた石が、まさかイモリに当たり、イモリは死んでしまいました。

城の崎滞在中に目の当たりにした動物たちの生と死。
その生と死に自らのとりとめた命と重ね合わせます。

僕は『城の崎にて』の何が気に入ったか

ストーリー性やドラマ、どんでん返しというものは一切ありません。
淡々と滞在中の城の崎で見たものや考えたことが書かれています。

その書かれ方が、静かで、正確で、丁寧で。
そんな文体が気に入ったのだと思います。
見たもの、感じたこと、考えたことを、少しの間違いもように、正確に丁寧に書かれている感じがしました。

志賀直哉にハマりました

僕はこれで志賀直哉にハマり、『清兵衛と瓢箪・網走にて』『志賀直哉随筆集』と立て続けに読みました。

清兵衛と瓢箪・網走まで

志賀直哉随筆集

中編・長編はあまり読む気にならず『和解』『暗夜行路』は読んでいません。